2009年10月21日

遺言執行者(其の一)




 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言執行に
必要な一切の権利を有します。
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 相続人は遺言の執行を妨害する行為をすることが
できません。

 従って、遺産のすべてを管理している相続人の1人に
対しては、遺言の執行に対する妨害を排除し、
場合によっては訴訟提起により、遺言執行を実現する
ことも遺言執行者の判断で行うことができます。

 民法1012条で
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言に
必要な一切の行為をするとされています。

 ここで言う「必要な一切の行為」とは
「そのために(相続財産の管理その他
遺言執行のために)相当かつ適切と認める行為」
を意味します。
(最判44・6・26判時563・38)

 遺言とは相続財産等についての被相続人の
意思を表します。
それ故、如何なる行為が「相当かつ適切と認める
行為」かは、遺言者(被相続人)の真意に沿った
行為であるか否かで判断することになります。

 遺言執行者は遺言執行の対象となる相続財産に
対して排他的に管理処分権を有します。
つまり、遺言執行者がいるときにおいて、相続人は
相続財産の管理処分権限を失い、相続財産の処分
その他遺言の執行を妨げる行為をすることが
出来ません。(民法1013条・1014条)

 また、これに違反してなされた相続人の
処分行為は無効であるとされています。
(大判昭5・6・16民集9・8・550)

 遺言執行者は相続財産の存否を調査し
必要に応じて、相続財産の管理者から引き渡しを
受け、自らの管理下に置くなどの措置を
取ることになります。

 また、遺言執行に必要な物件を占有する第三者に
対しては、その引き渡しを求めることもでき
遺言執行を妨害する者に対しては、訴訟提起を
することも含めて、その妨害を排除する行為を
することができます。

 その他、遺言執行者の権限として
遺贈義務の履行、遺言認知の届出もあります。

:以下、次回に続く


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2009年10月20日

「撤回」と「取消」



このところ、高齢者の万引きが増えていると言われる。
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 静岡県の例だと、高齢者の万引きのほうが
未成年者の万引きより多くなったと報じている。

 未成年者の万引きが「ゲーム感覚」に端を発して
いるのに対し
高齢者の万引き理由は「孤独」から来ている
のだそうである。

孤独=万引き
の図式が私には素直に理解できない。

さて、本題。

 特に理由がないのに法律行為または意思表示を
一方的になかったことにすることを
民法学では「撤回」と呼んでいる。

 但し、民法の条文には「撤回」という言葉は
まったく出てこない。

多くの場合に使われるのは「取消」である。

 例えば
詐欺又は強迫によって行った意思表示を取り消すなど
意思表示に欠陥があるために法律行為の効力を
遡及的に消滅させる場合。

 親が未成年者に与えていた営業の許可を取り消すなど
既に効力が生じている欠陥のない法律行為を
消滅させる場合。

 または遺言者が遺言を取り消すなど、未だ終局的な
効力を生じていない法律行為の効力発生を
阻止する場合など。

さまざまある。

では、取消と撤回はどのよう相違するのか。
 
取消には意思表示に欠陥あるという取消原因が
必要だが、撤回には理由がいらないと言った
点である。

 但し、自由で一方的な撤回が常に許される
訳ではない。
できる場合とできない場合がある。

撤回の定義づけは現行では統一されていない。

 撤回を「まだ効力が発生していない法律行為について」と
定義づけたり
「将来のみ向って法律行為の効力を否定するもの」と
定義づけたり、ばらばらである。

 参考ながら
契約当事者の一方が意思表示によって
契約をなかったことにする場合は
特に「解除」という言葉を用い
撤回と明確に区別している。

 法律用語。
判っているようでいて、矢張り判らない点が
ただありそうである。

:参考書

「条文にない民法」
「法律用語」
「民法総論」


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Posted by 左近法務事務所at 20:45
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2009年10月19日

「夜郎自大」



昔、中国の漢時代。
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中国南方の片隅に「夜郎」という小国があった。

 あるとき、この国に漢の使者が立ち寄った。
夜郎の王が、漢の使者に対して訊ねた。
「貴の国と我が国はどちらが大きか」。

 およそ中国全土に覇を成していた漢帝国と
夜郎とは月とスッポンほどの違いである。

 こうした愚問を発した夜郎の王の
視野の狭さを笑ったのが「夜郎自大」
という言葉に他ならない。

 翻って経営者を語る時
「その人の器に合った規模の会社しか持てない」と
言われる。

 一代で大会社まで成長させる人もいるが
多くは数十人から数百人規模の会社で
成長が止まってしまう。

 経営者その人の「器」だという指摘は
案外的を得た表現なのかも知れない。

 一方、二代目や三代目は、初代と違って
高学歴を身につけ、中にはアメリカあたりに
留学して経営学の知識をたっぷり
詰め込んでいる。

 要するに知識は持っているし、視野も広い
訳である。

 だが、彼等の多くは生活の苦労も知らないし
実践体験にも乏しい。

論語では、これを「弘毅」と呼んでいる。


 「弘」とは
広い視野、高い見識を意味する。

 「毅」とは
強い意志力であり、困難に出逢ってもめげない。
壁にぶつかってもたじろがない。

 つまり車の両輪の如きもので
どちらか片方が欠けていたのでは
その力を発揮できない。

 経営の二代目、三代目とは
初代と比較されながら、その宿命を背負いつつ
進むべき道を模索しなければならない。

 広い視野と強い意志力。
二代目、三代目は初代よりも
厳しい試練に立ち向かわなければ
生き残れない。

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2009年10月17日

「酔生夢死」




ただ漫然と生き、無意味な一生を送ることを
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「酔生夢死」と言います。

できれば、こうした生き方は避けたいと願うのは
人の常でしょう。

陽明学の始祖王陽明は
「志立たざれば、舵なき舟、轡なき馬の如し」
と語っています。

志が立っていなかったら、波の間に漂うだけの存在
になってしまう。

そんな生き方をして、振り返ったとき
自分の一生は一体何だったのか
空しい思いが去来する。

人間である以上、誰だって死を免れることは
できない。

「わが人生に悔いなし」とまで
いかなくとも
「まあまあの人生だった」。
そんな思いで目をつむりたい。

志を立てたら
次はできることから始めて
苦しくとも辛くとも
それを乗り越えて、実現を図りたい。

ただ、あまり目標にこだわると
その生き方が窮屈になってしまう。

そんなときは、当初の目標を引き下げて
少しのんびり構える。

目標がないよりも
はるかに上等だと私は思っている。

:参考書
「近思録」
守屋 洋 著

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2009年10月16日

なぜ「字」を書き続けるのか



字を書くことは脳に良いと以前から言われていますね。
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 字を書く。
文章を書くのが商売の私でも、パソコン以外に
その原文は鉛筆で書いて準備するよう
意識しています。

字を書くときは頭で、まず考えますね。

 それが脳に刺激を与えて
物忘れや記憶違いなどを防止する
と言えます。

 鉛筆や箸を使うときには
手首、指、肩など30以上の関節と
50以上の筋肉を使うのだそうです。

 ここで、みそなのは
シャープペンシルではなく、鉛筆が
良いそうなのです。

 何故、シャープペンシルがダメなのは
芯が折れたときに思考が中断され
好ましくない。
との事です。

 脳への刺激は指にあり
書く作業や箸を使う作業は
指を微妙に動かしますね。

それがいいのだそうです。

 翻って見れば
字を書き、箸を使うことが
日本人の手先の器用さを支えてきた。
それが、世界に冠たる
「ものづくり王国・日本」
の原動力にもなっているといえるからです。

 こうして解ることは
何歳になっても字を書く習慣を
失わないこと。

改めて肝に命じました。

:参考書
「男はちょっと硬派がいい」
川北義則著
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Posted by 左近法務事務所at 20:40
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2009年10月14日

「離婚」:口約束は守られない!



協議離婚の場合。
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 離婚届には、子どもの親権者以外の取り決めを
するようにはなっていません。

 親権者さえ決まれば、離婚届の形式は
基本的に整ってしまいます。

 この場合、離婚届に記入する欄がないからと
いって金銭面や財産面での取り決めを
うやむやにして置くと、後になって争いの原因に
なりかねません。

 例えば
財産分与や養育費など口頭で約束し
離婚届を出してしまった場合、
口約束の通りに財産分与や支払いが
行われないのが圧倒的です。

 先ず、離婚後に問題になりやすい事柄について
両者の話し合いで決まった内容を書面に
しておくことが最も大切ですね。

 書面があれば、相手方が約束を守らない場合
裁判での言い逃れを予防することができます。

 更に離婚協議書を公正証書にすれば
「約束を守らない場合は強制執行を受けても
異議ありません」という文言が入ります。

 つまり裁判の手続きを経ることなく
強制執行ができる訳です。

 では、離婚協議書には
どんな内容を盛り込み
取り決めるべきか重要な項目を挙げてみます。

1 未成年の子どもがいる場合
  親権者を誰にするか
  また、親権者と監護者が異なる場合は
  その旨も取り決めます。

2 未成年の子どもの養育費は
  誰が・幾ら・いつまでに・どのように
  払うかを取り決めます。

3 財産分与も同様に
  誰が・幾ら・いつまでに・どのように
  払うかを取り決めます。

4 慰謝料を請求する場合も同様です。
  誰が・幾ら・いつまでに・どのように
  払うかを取り決めます。

5 面接交渉はどうするのか。 
  その内容はどうするのか
  取り決めをしておきます。

 
 「離婚」するとは
想像を絶するほど
エネルギーを使いますし
お互いの一生が大きく
変わっていくことを意味します。

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2009年10月13日

人間らしさ




人間らしさとは何であろうか。
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人間らしさとは人間性。

 ほかの人も自分と同じ人間であるという
認識の上に立って、一緒に仲間として
生きていこうとする相互扶助の精神である。

 人間としての特質が問われるから
先ずは知力であり
広くかつ深く考えていく能力が必要だ。

但し、人間は神ではない。

 完全ではなく
常に間違いを犯す弱い存在である。

 その弱さや欠点を素直に認め発展させていくと
多少の失敗など気にならなくなる。

 人に対しても
あらゆる生きとし生きるものに対しても
優しく接するべきである。


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2009年10月12日

認知されない子の相続



摘出子と非摘出子という言葉がありますね。
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 摘出子とは民法772条で
正式な婚姻中に懐胎した子を指します。

 一方、非摘出子とは
正式な婚姻関係以外で生まれた子を指します。

 相続の場合、非摘出子であっても
法律的に被相続人の子であることが承認されれば
相続権は民法887条によって発生します。

この承認を民法779条で「認知」と呼んでいます。

 実の子とわかっていても
非摘出子の場合、認知されなければ
遺産相続の分配には入れない訳です。

 認知は父が進んで認めれば確定しますが
存命中、何等かの事情で認知できない場合
「遺言」で認知することができます。

 また父が認知しない場合は、子や孫は
認知の訴えを裁判所に求めることができますし、
死後3年以内なら検察官に証拠を提出し
死後認知の訴えをおこすこともできます。

[摘出の推定]

民法772条
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

[認知]

民法779条
摘出でない子は、その父又は母が
これを認知することができる。

[認知の方法]

民法781条
①認知は戸籍法の定めるところにより
 届け出ることによってこれをする。

②認知は遺言によっても、これをすることができる。


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2009年10月11日

養子の場合の相続権



 民法887条で、子供は配偶者とともに、相続の
第一順位になりますね。
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 被相続人の両親や兄弟姉妹よりも、相続権に
ついては、法律的に保護されています。

 実子でなくとも養子縁組したときは
養子は民法809条で養親の摘出子と同じ身分を
取得します。

 つまり養親の遺産に関して
摘出子と同様の相続権を持ちます。

では、実の親とはどういう関係になるのでしょうか。

 他家に養子に入った子にも
実の親の遺産相続をする権利があります。

養子の場合においては
・養家の親の遺産相続
・実の親の遺産相続

両方とも認められています。

 養子縁組では法律的な手続きを正式に
済ませていれば仮に養家に住んでいなくとも
相続はできます。

[養子をする能力]

民法792条
成人に達した者は、養子をすることができる。

[摘出親子関係の発生]

民法809条
養子は、縁組の日から、養親の摘出子たる
身分を取得する。

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2009年10月10日

「年金」を差し押さえる?




年金は法律によって差し押さえが禁止されています。
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 判決などに基づいて債権者から預金債権に対する
強制執行(差押え)が申し立てられると、裁判所は
債権の差し押さえ命令を出します。

 これが銀行に送達されると銀行は預金者に対し
預金の払い戻しを禁止させますね。

 債権者は預金債権を取り立てて債務の弁済に
充当します。

 しかし債権者は、債務者の債権を全て
差し押さえられる訳ではありません。

 民事執行法152条では
給料、賃金については原則として3/4に相当する
部分については差し押さることができません。

 また、厚生年金保険法41条では
同法に基づく年金については、全額につき
差し押さえが禁止されています。

 こうした規定は他にも
国民年金法24条
国家公務員共済組合法49条
など、多数あります。

 但し、元は年金であっても銀行預金口座に
振り込まれれば、それは銀行に対する
「預金返還請求権」という債権になり
年金そのものではない=差押えが可能
の論理も働きます。

 一方、年金は振り込まれる前も
振り込まれた後も、そのお金は
債務者の生活のためであって
社会政策的見地から保護すべきものと
解されています。

 従前は上記のように見解が分かれていましたが
最近の判例では
年金が銀行口座に振り込まれた場合には
その年金相当分について、差し押さえが
禁止されるとしています。

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2009年10月09日

「金は三欠くにたまる」



「金は三欠くにたまる」という諺。
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 義理と人情と交際の三つを欠く生き方に徹すれば
金は直ぐにたまるのだそうである。

さしずめ私など到底まねもできそうもない。

 命という最も大切なものの重要度は別格だが
、その命すら金がなかったら維持することすら
危ういのもまた紛れもない現実である。

 現代の社会の仕組みは
金と物との交換が基本になっている。

 但し、金は生きていくための「手段」の一つである。
金を手に入れることが、人生における「目的」で
あると考えるのは間違っている。

 人から「ケチ」と言われる金持ち。
金の使い方が利己的で、時には非難と対象となる。

 しかし金持ちの中にも
自分が意気に感じたものには、惜しげもなく
金を出している。

 金を惜しんで出さないのではなく
効果的な金の使い方を目指しているからだ。

人間はある意味
いつでも、金に振り回され
金に使われているのかも知れない。

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Posted by 左近法務事務所at 17:22
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2009年10月08日

告訴・告発と誣告罪



告訴・告発は似て非なるものです。
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「告訴」とは
犯罪の被害者が、犯人を処罰して欲しいと
捜査機関に申し出ます。
一方
「告発」とは
犯罪の被害者以外の者が
犯人の処罰を求めて犯罪事実を捜査機関に
申し出ることを言います。

刑事訴訟法239条では
「何人でも、犯罪があると思うときは
告発をすることができる」と定めています。

告発は犯人の住所地か、その犯罪が行われた場所を
管轄する警察署または検察庁に
犯罪事実を告発状という書面にしたためて
提出するのが原則です。

但し、告訴や告発をする上で注意すべきことは
一つあります。

それは正確に事実を把握しないで、真犯人でない者を
犯人だとして告訴や告発をした場合です。

他人を刑事処分や懲戒処分を受けさせる目的で
虚偽の申告をする「誣告罪」があります。

刑法172条
「三か月以上10年以下の懲役」
になります。

告発された者が誣告罪の犯人として
逆に告訴をすることがよくあります。

従って、単なる直観ではなく
証拠の裏付けを確保して置くことが必要です。


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2009年10月07日

離婚後の生活



私の事務所の門を叩かれる相談者。
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多くの方が、お子さんを抱えた女性です。

「離婚」という2つの文字。

相手を選んだのは自分自身。
結婚したことの責任は自分自身にもあります。

 相手を責める前に
「なぜ自分は結婚したのか」
「なぜこの人を結婚相手に選んだか」
振り返ってみることも大切です。


さて
離婚した場合、どのような生活が待っているのか。

離婚後の生活イメージとして
3つの視点から捉えてみます。

①生活費

 女性の場合、離婚に際して最も大きな問題が
生活費です。
離婚の障害として生活力が一番に来ます。
夫婦関係は修復できない悪化の一途を辿りながらも
離婚後の生活設計に目途が立たないため
現状に我慢しているケースがかなり
多いのだろうと思われます。

 家庭裁判所で離婚調停が成立した事件の統計では
財産分与と慰謝料を合算した支払額は
平均382万前後。
離婚の90%を占める協議離婚に至っては
慰謝料や財産分与の支払いがあるのは半分以下で
その金額もせいぜい300万前後です。

 矢張り、離婚後の生活がうまくいくかいかないか
経済的な自立ができるか否かに掛っています。

②住居

 離婚後も同じ家に住み続けることもあり得ますが
夫の親が建てた家だったり、親との同居だったり
すると離れざるを得ないようです。
実家の親が健在で経済力もあるようでしたら
実家に戻って親と同居するケースもあります。
それが無理な場合は、古いアパートで子どもと共に
新しい生活をスタートさせることになります。

③子ども

 よく「離婚は子どもを不幸にする」と言われますが
そう一概に言えないケースもあります。
両親のいさかいを目の前ににして生活するより
離婚によって活気を取り戻した母(または父)
と共に生活するほうが、子どもにとって
良い環境であると考えます。

 しかし、離婚によって、子どもは
計り知れないダメージを受けますので
親の愛情や配慮が不可欠になります。

 さいごに
夫婦二人の問題ではなく
子どもの幸せを一番に考え
子どもの意思を尊重して
決めることが鉄則です。

〈参考書籍)

・離婚の本:太田宏美

・円満に別れるための離婚の方法:竹森裕子

・社会生活六法:新日本法規

・民事渉外の実務:新日本法規

・家事事件の申立書式と手続き:新日本法規

・離婚を巡る法律知識:宇多啓子

・離婚の法律相談:本田一則

・わかりやすい離婚:平山信一

・離婚と慰謝料:有吉春代

・他

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2009年10月06日

「非摘出子」の遺産相続



婚姻していない男女の間に生まれた子を
「非摘出子」と呼びます。
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 つい、この頃
非摘出子の遺産相続に関して
以下の特別抗告が棄却されましたね。
(原文のまま) 

 婚姻していない男女の間に生まれた「非嫡出子」の
遺産相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定の
合憲性が争われた審判で、最高裁第2小法廷
(古田佑紀裁判長)は9月30日付の決定で
「法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない」と
判断し、非嫡出子側の特別抗告を棄却した。

 決定は4裁判官中3人の多数意見で、
判例を踏襲した。今井功裁判官は
「子の出生に責任があるのは被相続人で、
非嫡出子には何の責任もない。規定は違憲」と
反対意見を述べた。
合憲とした竹内行夫裁判官も「相続時は合憲だが、
社会情勢は変化し、現時点では違憲の疑いが
極めて強い」と補足意見を述べた。

 非嫡出子の相続差別を巡っては、95年の
最高裁大法廷決定が初の合憲判断を示したが、
15人中5人が「違憲」とした。03〜04年の計3件の
小法廷判決は、いずれも裁判官5人の意見が3対2
で合憲となる小差の判断が続き、最高裁の
新たな判断が注目されていた。

 法制審議会は96年に相続差別の解消を
盛り込んだ民法改正案を答申したが、
一部議員に反対が強く法案の国会提出は
見送られている。
非嫡出子の出生割合は00年の1.63%から
06年は2.11%に増加し、海外も相続の平等が大勢。
竹内裁判官は国会に改正を強く求め、今井裁判官は
「立法を待つことは許されない時期に至っている」
とまで指摘した。
千葉景子法相は改正法案の早期提出に
意欲を示している。

 審判では、00年に死亡した沖縄県の父親の
相続について、非嫡出子側が平等な遺産分割を求め、
嫡出子側は民法規定通りの配分を求めた。
那覇家裁名護支部と福岡高裁那覇支部はともに
嫡出子側の主張を認めた。

 さて、本題。
非摘出子の場合、認知されていても
父親の戸籍に入っていないので
相続問題が起きた時、遺産分割から
外されてしまうケースが見られます。

 民法909条では、遺産の分割は相続のときに
さかのぼって、効力が生じると規定しています。

[分割の遡及効]
民法909条
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼって
その効力を生ずる。
但し、第三者の権利を害することはできない。

 認知された子供であれば、たとえ遺産分割が
終わったあとでも、相続開始の時にさかのぼって
遺産を分割して受ける権利があります。

 従って最初に戻って、新たにやり直さなければ
ならないのです。

 民法910条では、相続人が処分その他を
してしまった場合には、それに見合う価額のみ
請求できるとしています。

 例えば、分割された土地を既に売却してしまった時
その原物を取り戻すのは、第三者の権利を
侵害することになるからです。

 また、これとは逆に正当な相続人でない者に
遺産がいってしまうこともあります。
遺産分割の後で、受け継いだ不動産が
他の相続人名義になっていた場合などです。
 
 このときには「相続回復請求権」を行使できます。

[相続開始後の被認知者の分割請求]
民法910条
相続開始後、認知によって相続人となった者が
遺産の分割を請求しようとする場合において
他の共同相続人が既に分割その他の処分を
したときは、価額のみによる
支払いの請求権を有する。

[相続回復請求権]
民法884条
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人
が相続権を侵害された事実を知った時から
五年間これを行わない時は、時効によって消滅する。
相続開始の時から二十年を経過した時も
同様である。

[共同相続(一):相続財産の共有]
民法898条
相続人が数人あるときは、相続財産は
その共有に属する。

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2009年10月05日

「支払督促」が来た



 そろそろ、炬燵が恋しくなる時期になりました。
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我が家では、この10月から居間に炬燵を出しました。
2月生まれですが、根っからの寒がりです。

さて今日は「支払督促」です。

 一般的には、債務者が債務の履行を任意に
しない時は、債務者は裁判所に訴えを起こします。

相手方当事者も原則として加わる訴訟手続きにより
慎重な審理に入ります。

最終的には判決を受け、それを元に
強制執行をする手続きを踏まなければ
権利の実現は図れません。

しかし、それには時間と手間とお金が掛ります。
 
 そのために
簡易迅速な手続きによる「支払督促」を得ることが
できる「督促手続」と言われる
特別な手続きが民事訴訟法で認められています。

債権者は、簡易裁判所の裁判所書記官に
支払催促の申立てをします。
その申立て内容を見て、請求に理由があると
認められれば、支払督促を得ることができます。
尚、裁判所書記官は債権者に証拠の提出を
求めることはできません。
更に債務者に事情を聞くこともできないことに
なっています。

但し、こうした場合、一方の債務者が
不利益を被る危険性もあります。
それを予防するために、債務者には
「催促異議の申立権」が認められているのです。

債務者は支払督促の送達を受けた日から
2週間以内に督促異議の申し立てを
することができます。

しかし、債務者が、支払督促が送達されて
2週間以内に督促異議の申し立てずに
放置すると、債権者が「仮執行宣言」の
申立てを行うことになります。
(仮執行宣言をしないで30日が経過すると
 従前に得た支払督促は失効します)

 「支払督促」から「仮執行宣言付支払督促」
に変わると、強制力が伴ってきます。

つまり、土地や建物、給料や預金などを
差し押さえられる恐れがでてくる訳です。

「仮執行宣言付支払督促」に対しても
債務者は督促異議の申し立てができます。
この場合も、支払督促と同じく、送達の日から
2週間以内です。

債務者が、督促異議の申し立てをしないで
2週間が経過してしまうと
「仮執行宣言付支払督促」は確定して
確定判決と同一の効力が生じます。

督促異議の申し立てをしても
土地や建物、給料や預金が差し押さえられる
恐れは変わりません。

 これを免れようと思えば
「執行停止の申立て」が必要です。

裁判所に対して「執行停止決定」を
もらわなくてはなりません。

そのためには

・支払督促の取消若しくは変更の原因となる
 事情がないとはいえないこと

・執行により償うことができない損害を生ずる
 ことがあることについての疎明を要す

但し、この決定をもらうには多くの場合
保証金を預託しておく必要があります。

(参考法令)

民事訴訟法382条〜396条


相続・告訴告発・離婚・内容証明の専門家

青木法務事務所HP
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Posted by 左近法務事務所at 15:25
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2009年10月04日

酷い噂話を立てられた時の対処法



根も葉もない噂話とはよくありますね。
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 そんな時、どうされますか。
そうした場合の対処法を
今日はご説明たします。

 先ず、第一に本当に噂話を流しているのか
どうか確かめます。

 その段階で、事実関係の確認が取れたら
二度と噂を立てないように申し入れます。

 それでもまだ続くようであれば
損害賠償請求を求めます。

 また噂を流した者の行為が
名誉棄損にあたる場合は
名誉の回復請求や刑事告訴することもできます。

 人は自己に関する情報をコントロールする権利
(プライバシーの権利)を有していると
解されています。

 私人である場合は、このプライバシーの権利の
内容として、個々の情報を公にされない権利を
有しています。

 噂話が多くの人や不特定の人に成される場合には
名誉棄損罪が成立する余地があります。

 名誉棄損罪が成立する場合には
告訴することによって刑事処罰を求めることが
できます。

 加えて損賠賠償請求と共に
謝罪文書の関係人への配布など
名誉を回復する処分も求めることができます。

(参考法令)

・憲法13条
・民法709条、723条
・刑法230条、232条

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Posted by 左近法務事務所at 16:52
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2009年10月03日

人に「お金を貸す」際の注意点



最近、そうした相談者が多くなりました。
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人にお金を貸すことは、返してもらえない危険を
負担するということです。

できたら避けたいものですが
様々な事情からそうばかりは
言っていられないのが実情でしょうか。

先ずは「貸したら返す」ことを約束した
証拠を残して置くが大前提です。

それでは、貸す際の注意点を挙げてみます。

① 相手の返済能力をみる

 「ない袖は振れられない」という諺があります。
借りる人の資産があるのかどうか。
その人の収入はどれくらいか。
不動産などの資産があるのか。
あっても担保に入っていないか。
換価が容易かどうか。
将来入るあての収入があるのか。
あった場合、それは確実なのか。

など、確認して置く必要があります。

② 相手の人柄を見る

 相手に返済能力があっても、返す気がなければ
お金は返ってきません。
必ず返すよう努力してくれる誠実な人であるか
どうかを見極める必要があります。

③ 返済時期、返済方法、利息を確認して置く

 いつまでに、どのように(一括か分割か)
返済してもらうかを確認しておきます。
返済方法のプランができなければ
確実な回収はおぼつかないと言えるでしょう。
また、利息を取る場合には、その割合および支払方法
についても決めておきます。

④ 借用証を作成しておく

 貸したお金が返してもらえないとなれば
裁判などの法的手段を取らざるを得ません。
しかし、その時
「貸したこと、返す約束をしたこと」の証拠が
必要です。
相手が「借りた覚えがはない」と
開き直れば、裁判で負けてしまうおそれが
あります。

(借用証作成時の記載事項)

・「金○○○万円を本日借り受けました」
 という趣旨の文言。

・返済時期、支払方法の取り決め。
 例えば「平成○○年○月○日限りに返済します」
 のように記載します。

・利息の取り決め
 「利息は年○%とする」が一般的です。
 利息に関しても一括で払うのか分割して払うのか
 決めておくべきです。

・借用証を作成した日付は必ず記載します。

⑤ 担保を取ること

 万が一のことを考えて担保を取る方法もあります。
通常は不動産に抵当権を付ける方法が取られます。
また、資産のない借り手にあっては
資力のある者を「保証人」とすることも
有効な方法です。

最後に
生きている限り「お金」から
縁を切ることはできません。

そうした心配事、悩み事は
然るべき法律家に
先ずは相談されることをお勧めします。

相続・告訴告発・離婚・内容証明の専門家

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Posted by 左近法務事務所at 11:08
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2009年10月02日

「交通事故」における損害賠償額



今日のような雨降り。油断は禁物ですね。
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でも、油断してなくとも遭うのは交通事故。

私たちの周りにも
交通事故を起こした人。
また、交通事故に巻き込まれた人。
たくさんいますね。

今日も真面目なお話。

交通事故によって負傷した場合、
財産的損害と非財産的損害が生じます。

財産的損害には
①積極的損害(治療費・通院のための交通費など)
②消極的損害(休業損害・逸失利益など)
があります。

また非財産的損害として
③精神的損害(慰謝料)が挙げられます。

それぞれの損害の具体的な賠償額の算定基準は
交通事故においては、かなり定型化されています。

では、もう少し突っ込んで説明しましょう。

①積極的損害

積極的損害とは、事故によって被害者側の
財産が減少したことを言います。
負傷した場合における積極的損害には
・治療費
・入院費
・付き添って看護した場合の看護費
・入院中の諸雑費
・入・通院のための交通費
・義足や車イスなどの装具代
・訴訟を行った場合の弁護士費用
などが挙げられます。

治療費、入院費、交通費、装具代については
実費全額が原則として損害になります。

入院雑費や近親者による付添看護費などの
損害額は定額化されていますが
その基準は
示談の場合

訴訟の場合
では違いが生じます。

②消極的損害

消極的損害とは、事故がなければ
将来被害者が得たであろう利益を指します。

消極的損害としては
事故によって休業した場合の休業損害や
後遺障害が残ったことによる逸失利益があります。

これ等の損害は、原則として事故前の収入を
基礎として計算します。

例えば無職者の場合、
原則として休業損害は生じませんが
逸失利益については、労働能力と意思があれば
男子又は女子の平均賃金を基礎として
計算してよいと解されています。

③精神的損害(慰謝料)

交通事故によって負傷した場合は
受傷による精神的な苦痛も損害になります。

この精神的損害(慰謝料)には
・入院や通院治療を余儀なくされたことに対する慰謝料

後遺障害が残った場合に
・後遺障害に対する慰謝料(後遺症慰謝料)
があります。

尚、慰謝料の額については、いずれも
その程度に応じて定額化されています。

交通事故は身近な問題です。
事故に遭った人も
事故を起こした人も
共に悲惨な状況に至ります。

お互いに注意し合いましょう!

*写真は依頼者から頂戴したお土産。
 おいしかったです。
 有難うございました。

相続・告訴告発・離婚・内容証明の専門家

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Posted by 左近法務事務所at 13:49
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2009年10月01日

「交渉」



交渉は虚々実々の心理戦と言われる。
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「虚」とは即ちハッタリである。

「虚」と「実」の狭間を先に見抜いたほうが
交渉を有利に運ぶことになる。

タンカも相手が「虚」と受け取れば
ただの脅し文句だが
「実」(本気)だと受け取れば震え上がる。

○暴は
1年365日、この「虚」と「実」の狭間に
身を置いて生きている。

そうした意味において
相手の本心を見抜く眼力は
プロ中のプロと言える。

ついでながら
何故か、私の事務所にも何人か来られた事がある。

関西の現役さんが言うのには
「顔は平然としているのに、態度がせわしない
ヤツは、ウソついていると思っていい。
やたら足を組み替えたり、手で鼻や口を触ったり、
訊かれた返事は短いくせに、自分から
しゃべる話は長い。こうした類も同じだ」
そうである。

最後にタンカを切りながら
話をどう有利にまとめるか、頭の中では
”終戦処理”を考えているのである。

10月1日
今日は「法の日」

法治国家において反社会的存在とされるが
彼等を粗暴なアウトローと考えるのは
間違いである。

彼等こそ言葉を武器とする
パフォーマンスの天才集団なのである。

「清」と「濁」
この構造で社会は成り立っている。

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Posted by 左近法務事務所at 20:50
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